□海に行こう 怒涛のスイカ割り編2□



「邵可さま、頑張って~!北斗兄も負けるな~!」

 ・・だが、いつ決着がつくとも分からない不毛な戦いを止めたのは珠翠のそんな無邪気な一言だった。

「「・・・何やってんだ・・。(-_-;)」」

 珠翠の声に、魁斗も北斗も我に返る。
小さな珠翠の前で、保護者である筈の自分達が何を馬鹿やってるんだか・・。

二人は激しく落ち込みつつ、珠翠を抱き上げてその場から足早に退散した。
・・闘いの決着と賭け金の行方を見守っていたギャラリーから激しいブーイングが巻き起こったが、そんなの知った事ではない。

しかし主役が居なくなってしまっては仕方無い。やがてギャラリー達もその場から散って行った。

・・後には闘いの最中でズタズタになった北斗の白いフンドシだけがひっそりと砂の上に残っていた。



「・・・ごめんな、珠翠。」
「折角の海なのに嫌な思いをさせちゃったね。」

 珠翠の手を引いて波打ち際を歩きながら、北斗と魁斗は揃って珠翠に謝った。
彼女に楽しんでもらう為の海水浴だったのに、蓋を開ければ自分達の事ばかりで何一つ珠翠の為にしてあげられなかった。・・保護者として最低である。兄貴分二人は心の底から反省した。

 陽は西へと傾き掛けている。もうそろそろ帰る時間だ。

「どうして謝るのですか?凄く楽しかったのに。」

 だが珠翠は不思議そうにそう言って、しゅんとなる二人の様子に首を傾げる。

「ここに来る時ずっと邵可さまの背中に揺られて幸せでしたし、海も綺麗で気持ち良かったです。三人で今までに食べた事も無い美味しいものも食べれましたし、北斗兄も常に私を楽しませてくれました。今日の楽しい思い出はきっと一生忘れないでしょう。・・私は本当に幸せ者ですね(^-^ )」

「「・・・珠翠・・。」」

 二人は優しくそんな珠翠の頭を撫でる。・・彼女がこんなに感情豊かに話したり笑ったりするなんて昨晩まで考えられなかった事だ。凄い進歩である。

本当に、ここに来て良かった。珠翠の笑顔に魁斗と北斗は心からそう思えた。

「私の拾った桜貝、薔薇姫様に気に入ってもらえるかな?」

 珠翠がそう言いながら取り出した小瓶には、小指の爪ほどの大きさの貝が入っていた。振ればシャラシャラと微かな音を立てる薄い桃色の貝殻。それを材料にすれば、さぞや綺麗な耳飾りが出来るだろう。

「気に入るに決まってるよ。だって珠翠が彼女の為に集めたものなんだからね。」

 魁斗がそう言って珠翠の髪を撫でると彼女は嬉しそうに目を細めた。
そんな珠翠を今度は北斗が肩の上へと抱き上げる。

「それじゃあそろそろ着替えて帰るか。薔君も待ってるだろうからな。」

「そうだね。あんまり遅くなると拗ねてしまうし。帰りに花火をいっぱい買って帰ろう。今夜は四人で花火をしながら薔君に海での出来事をたくさん聞かせてあげなきゃね。」

「海の家の土産コーナーで買った藍州酒とおつまみ昆布もあるしな☆」

「わぁ~、お庭で花火をしながらお喋りですかvv今日は楽しみがいっぱいですねvv」

 まだまだ終わらない楽しい一日に珠翠の瞳も輝いた。

「よし、じゃあさっさと着替えて帰ろうぜ・・・ってオイ魁斗ォ!おま、俺のフンドシぃ!!」

 荷物を抱えて更衣室へ向かおうとした北斗の脳裏にある事が思い出された。そう、自分のフンドシがズタズタになって砂浜の藻屑と消えた事を・・。

「どーしてくれんだ!あれしか無いんだぞ!?(゚Д゚#)」

 色んな事に無頓着な北斗は、履いて来た下着を帰りも履いて行くつもりだった為に替えなど用意していなかったのだ。

「どうするもこうするも、今履いてる塩まみれの黒フンのままかノー●ンで帰るかの二択だろう。」

「フルチンなんかで全力疾走出来るかよ!?棒と玉とがぶつかって一人スイカ割りじゃねぇか!くっそー!お前のを寄越せ!!(゚Д゚#)」

「人の下着を履こうとするな!この変態!!(゚Д゚#)僕の一つ下の弟じゃあるまいし・・!」

「うわ、お前の弟って相当ヤバイな!(゜Д゜||)」

「お前が言うな!(゜Д゜||)」

「くすくす・・邵可さまと北斗兄って本当に仲がいいんですねv」

「・・そんな仲良しこよしみたいに言わないでくれるかい?(-_-;)」

「あ!何だよ!俺達仲良しだろ!?」

「その意見に関しては全力で否定させて貰うよ。」

「くすくすくす・・」

「あ、ホラ、珠翠に笑われたじゃねーか!ミエミエのウソ吐くなよ(笑)」

「・・・はぁ・・もう何だっていいよ・・お前の能天気さが、時々酷く羨ましく感じられるよ。(-_-;)」

 ・・こうして珠翠の初めての海水浴は終了したのだった。煌く海よりも尚、輝く思い出を胸に残して。



「・・んん?何だ?この白い布の残骸は・・?」

「良く分からんが、聞いた話によると180センチくらいの男と髪の長い少年が揉み合って、その時、ズタズタに引き裂かれたフンドシらしいぜ?」

「はァ!?∑(;゚□゚)何じゃそりゃ!?」

 海水浴客が帰った後。夕日に赤く染まる海岸を清掃していた清掃員は、そんな会話をしながら持っていたゴミばさみで浜辺に散らばるフンドシの残骸をゴミ袋に拾い集めていた。

 翌日、
『藍州のビーチに少年のフンドシばかりを切り裂く男が出没するらしい』
『公衆の面前であろうと力尽くでフンドシを切り裂く非情さ。あれはこの世のものではないな。妖怪とか魔物とかの類に違いない。』
『怪奇!フンドシ引き裂き魔!』
『特に長い黒髪の少年が狙われる。該当する者は絶対にビーチには行かない方がいい』
などという噂話が流れて藍州中の話題を攫ったのであった。

・・行く先々で伝説を作る男・北斗の今後の活躍に期待したい。



おわり☆


 

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